• 2月 6, 2026

認知症予防の可能性について

The Lancet Regional Health – Western Pacificに日本の認知症予防に関する論文が掲載されておりました。私の専門分野ではございませんが、超高齢化社会を迎え、非常に重要な問題であり、皆さんにもご紹介させて頂きたいと思います。

当院は京都市伏見区醍醐合場町にある、呼吸器内科を中心とした内科医院です。
京阪バス合場川から徒歩約1分
東西線石田から徒歩約10分
車の場合は六地蔵駅から5分、山科駅から15分、京阪宇治駅からも15分です。
お気軽にご相談ください。

当院HPはこちら
🚙アクセスはこちら
📅 Web予約はこちら
公式LINEはこちら

診察室で患者さんとお話ししていると、「親が認知症だったから、自分も心配で……」「年をとったら認知症になるのは仕方ないですよね」といったお声をよく耳にします。

確かに、認知症には遺伝や加齢といった、自分ではコントロールできない要素も関わっています。しかし、**「認知症は予防できる病気になりつつある」**と言ったら、皆さんは驚かれるでしょうか?

The Lancet Regional Health – Western Pacific』に、私たち日本人にとって非常に重要な研究結果が発表されました。それは、**「日本人の認知症の約4割は、予防可能なリスク要因によって引き起こされている」**という衝撃的なデータです。

今回はこの最新論文をもとに、私たち日本人が具体的に何に気をつければ脳の健康を守れるのか、わかりやすく解説します。

欧米とは違う!「日本人独自の」リスクとは?

これまでも「認知症予防には〇〇が良い」といった情報はたくさんありました。しかし、それらの多くは欧米のデータに基づいたものでした。欧米では「教育歴(学校教育を受けた期間の短さ)」が最大のリスクとされていますが、義務教育が浸透している日本には当てはまりにくいという課題がありました。

今回の研究の画期的な点は、**「日本人のデータ」**を使って分析が行われたことです。その結果、日本人が優先的に対策すべき「3大リスク」が明確になりました。

それが、以下の3つです。

これらを含む14のリスク要因をすべて取り除くことができれば、理論上、日本人の認知症の**38.9%**を防ぐことができると試算されています。これは、今の認知症患者さんの「10人に4人」は、生活習慣や環境の改善で発症を防げたかもしれない、という意味です。

それでは、トップ3のリスクについて詳しく見ていきましょう。

第1位:難聴(6.7%)

~「年のせい」と放置しないで~

意外に思われるかもしれませんが、日本人の認知症リスクの第1位は「難聴」でした。 耳の聞こえが悪くなると、脳に入ってくる情報量が激減し、脳への刺激が減ってしまいます。また、会話が億劫になり、人付き合いが減ることで社会的孤立を招くことも、認知症のリスクを高める要因です。

日本の大きな問題点は、**「補聴器を使っている人が極端に少ない」**ことです。欧米に比べ、日本では難聴を自覚している人のうち、補聴器を使用しているのはわずか15%にとどまっています。 「テレビの音が大きいと言われる」「会話を聞き返すことが増えた」という方は、耳鼻科で聴力をチェックし、必要であれば補聴器の活用を恥ずかしがらずに検討してください。それが脳を守る第一歩です。

第2位:運動不足(6.0%)

~週2回の習慣が分かれ道~

第2位は運動不足です。では、医学的に「運動不足」とはどのレベルを指すのでしょうか? 今回の研究では**「1回30分以上の運動を、週2回以上、1年間継続している」**という基準を満たさない場合を運動不足と定義しています。

ドキッとした方も多いのではないでしょうか。実際、この基準に照らし合わせると、対象となった日本人の**約76%**が「運動不足」に該当してしまうのです。 「毎日ジムに行こう」と気負う必要はありません。「週に2回、30分程度早歩きで散歩する」ことから始めてみませんか? 運動は脳の血流を良くし、神経細胞を守る物質を増やす効果が期待できます。

第3位:高LDLコレステロール(4.5%)

~血管の健康は脳の健康~

第3位は、いわゆる「悪玉コレステロール」が高い状態です。 コレステロールが高いと動脈硬化が進み、脳への血流が悪くなったり、小さな脳梗塞を引き起こしたりして、認知症のリスクを高めます。 健康診断で「脂質異常症」や「要経過観察」と言われて、そのままにしていませんか? お薬や食事療法でコントロールすることで、将来の認知症リスクを下げられる可能性があります。

他にもある! 見逃せないリスク要因

トップ3以外にも、気をつけるべき要因があります。

社会的孤立(3.5%): 独り暮らしや、地域との交流がない状態です。趣味のサークルに参加したり、友人と会話を楽しんだりすることは、立派な脳のトレーニングです。

糖尿病(3.0%)・高血圧(2.9%): 生活習慣病の管理は、心臓だけでなく脳のためにも必須です。

うつ状態(2.6%): 気分の落ち込みもリスクの一つです。心の不調を感じたら早めにご相談ください。

喫煙(2.2%): タバコは血管を傷つけます。禁煙に「遅すぎる」ことはありません。

「10%」の改善で、未来は大きく変わる

「今さら生活を変えるなんて無理」と思われるかもしれません。しかし、この研究は希望のあるデータも示しています。 もし私たちがこれらのリスクをほんの10%低下させると、約20万8000人の認知症発症を防げる可能性があるのです。さらに20%改善できれば、約40万人以上を減らせると予測されています。

メッセージ:今日からできる「脳の健康習慣」

認知症予防のために、特別な道具や高価なサプリメントは必要ありません。今回の研究が教えてくれたのは、ごく当たり前の健康管理の大切さです。

1. 耳を大切にする:聞こえにくさを放置せず、補聴器などの対策をとる。

2. 体を動かす:週2回、30分の散歩や運動を習慣にする。

3. 数値を管理する:健診結果(特にコレステロール、血糖、血圧)を無視せず、必要なら治療を受ける。

4. 人とつながる:外に出て、誰かと話す機会を持つ。

「認知症は怖い」と怖がるだけでなく、「4割は自分で防げる可能性がある」と前向きに捉えていただければと思います。 もし、ご自身の聴力やコレステロール値、生活習慣で気になることがあれば、次回の診察時にお気軽にご相談ください。あなたの今の健康を守ることが、10年後、20年後のあなたの脳を守ることにつながります。

難聴=補聴器ではなく、耳垢がたまっているだけのこともあります。まずは耳鼻科の先生に診てもらいましょう。当院からご紹介もさせて頂きます。ぜひお気軽にお声がけください。

一緒に、健やかな未来を作っていきましょう。

医療法人緑萌会 辻医院 075-571-0951 ホームページ