• 5月 4, 2025
  • 9月 29, 2026

非結核性抗酸菌症(肺NTM症・肺MAC症)とは?症状・治療・吸入アミカシンを呼吸器専門医が解説【2026年】

最近、ニュースなどで「非結核性抗酸菌症(NTM症)」や「肺MAC症」という病名を耳にした方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省は2025年から、毎年9月24日~30日を「非結核性抗酸菌症啓発週間」とし、病気についての普及啓発を行っています。

厚生労働省によると、日本の肺NTM症の有病率は年12~22%増加しており、人口10万人あたり210.2人と推定されています。以前は一般の方にはあまり知られていない病気でしたが、現在では決して珍しい呼吸器疾患とはいえなくなってきています。

ニュースを見て、

「自分の長引く咳もNTM症なのでは?」

「健康診断で肺に影があると言われたけれど大丈夫?」

「家族にうつる病気なの?」

と心配になった方もおられると思います。

この記事では、非結核性抗酸菌症、とくに日本で多い肺MAC症(はいマックしょう)について、症状、感染経路、診断、治療を始めるタイミング、標準治療、そして近年使用されるようになった吸入薬「アミカシンリポソーム吸入(ALIS)」まで、呼吸器専門医の立場からできるだけわかりやすく解説します。


なぜ今、非結核性抗酸菌症(NTM症)が注目されているの?

肺NTM症は、最近になって突然現れた新しい病気ではありません。

以前から知られていましたが、日本では患者さんが増加しています。

厚生労働省もNTM症について独立した情報ページを設け、2025年には啓発週間も始まりました。これをきっかけに報道で取り上げられる機会も増えています。

これまで、

「一部の専門医しか知らない病気」

という印象だったNTM症が、

「長引く咳の原因として一般の方にも知ってほしい病気」

になってきたといえるでしょう。

ただし、

咳が長引く=NTM症

ではありません。

喘息、咳喘息、感染後咳嗽、気管支拡張症、COPD、肺結核、肺がんなど、咳が続く原因には多くの病気があります。

ニュースを見て必要以上に怖がるのではなく、症状が続いている場合には一度原因を確認することが大切です。

→ 長引く咳でお困りの方へ


非結核性抗酸菌症(NTM症)とは?

「非結核性抗酸菌症」という名前は、少し難しく感じるかもしれません。

簡単にいうと、

結核菌ではない「抗酸菌」というグループの菌によって起こる感染症

です。

英語の Nontuberculous Mycobacteria の頭文字から、NTMと呼ばれます。

NTMは特殊な環境にだけいる菌ではありません。

土壌や水、浴室のシャワーヘッド、水道の蛇口など、私たちの身の回りの環境にも存在しています。

菌を含んだ細かな水滴や土ぼこりなどを吸い込むことで肺に入ると考えられています。

ただし、NTMを吸い込んだ人全員が肺NTM症を発症するわけではありません。体質や免疫、肺・気管支の状態なども発症に関係していると考えられています。


肺NTM症と肺MAC症は何が違うの?

患者さんからよく聞かれる質問です。

NTMは大きなグループの名前で、その中にさまざまな種類の菌がいます。

その代表が、

  • MAC(Mycobacterium avium complex)
  • Mycobacterium kansasii
  • Mycobacterium abscessus

などです。

このうち、日本の肺NTM症で特に多いのがMACです。

MACには主に、

  • Mycobacterium avium
  • Mycobacterium intracellulare

などが含まれます。

つまり、

NTMという大きなグループの中にMACがあり、MACによって起こる肺の病気が「肺MAC症」

と考えるとわかりやすいでしょう。

非結核性抗酸菌(NTM)の中にMACが含まれる関係図。肺NTM症の多くは肺MAC症で、一般的には人から人へうつらない

肺MAC症は人にうつる?

この点を心配される方は非常に多いです。

一般的な肺MAC症は、人から人へうつる病気ではありません

ここは結核との大きな違いです。

結核は人から人へ感染します。

一方、NTMは基本的に環境中の菌をそれぞれの人が吸い込むことで体内に入ると考えられています。

厚生労働省も、NTMは一般的には人から人へ伝播しないと説明しています。

そのため、一般的な肺MAC症では、

  • 家族と部屋を分ける
  • 食器を分ける
  • 家族との接触を避ける

といった対応は通常必要ありません。


肺NTM症・肺MAC症はどんな人に多い?

誰にでも発症する可能性がありますが、一定の傾向が知られています。

特に、

  • 中高年以降の女性
  • 痩せ型の方
  • 気管支拡張症がある方
  • COPDなど慢性的な肺疾患がある方
  • 過去に肺結核などの肺疾患がある方
  • ステロイドや免疫抑制薬を使用している方
  • 免疫機能が低下している方

などでは肺NTM症がみられやすいことが知られています。

ただし、

「痩せた中高年女性だから肺MAC症になる」

という意味ではありません。

体格だけではなく、気管支の構造、免疫、遺伝的背景など、さまざまな要因が関係すると考えられています。


肺NTM症・肺MAC症の症状は?

肺NTM症の難しいところは、

NTM症だけに特徴的な症状がほとんどない

ことです。

代表的には、

  • 長引く咳
  • 痰
  • 黄色・緑色の痰
  • 血痰
  • 息切れ
  • 倦怠感
  • 微熱
  • 食欲低下
  • 体重減少

などがあります。

一方で、初期にはほとんど症状がなく、健康診断の胸部レントゲンで異常を指摘されて初めて見つかる場合もあります。

厚生労働省も、長引く咳、痰、発熱、呼吸困難などを代表的な症状としながら、初期は無症状でゆっくり経過することもあると説明しています。

こんな場合には一度、呼吸器内科へ

  • 咳や痰が何週間も続いている
  • 血痰が出る
  • 原因不明の体重減少がある
  • 健康診断で胸部レントゲンの異常を指摘された
  • 気管支拡張症と言われたことがある

といった場合には、一度呼吸器内科で原因を確認してみることをおすすめします。

→ 長引く咳でお困りの方へ

→ 呼吸器内科について

長引く咳・痰・血痰が続く方へ

肺NTM症は、症状だけでは他の呼吸器疾患と区別が難しい病気です。咳や痰が数週間以上続く場合は、呼吸器内科でご相談ください。


肺NTM症・肺MAC症はどうやって診断する?

ここは非常に重要です。

「痰からNTMが1回出た=肺NTM症」ではありません。

NTMは環境中にも存在する菌だからです。

そのため、

画像検査と細菌学的検査の両方をみながら診断します。

胸部レントゲン・胸部CT

胸部レントゲンで異常が疑われる場合には、胸部CTが非常に重要です。

肺MAC症では代表的に、

  • 結節・気管支拡張型
  • 線維空洞型

があります。

結節・気管支拡張型は中高年女性に比較的多く、ゆっくり経過することがあります。

一方、空洞を形成する病型では進行しやすいことがあり、より積極的に治療を検討する場合があります。

※当院にはCT装置はありません。CTが必要と判断した場合は、連携医療機関で検査を受けていただきます。

喀痰検査

診断で非常に重要なのが痰の抗酸菌検査です。

痰の中に抗酸菌がいるかを顕微鏡で調べる塗抹検査、菌を育てて種類を調べる培養検査に加えて、PCR検査(遺伝子検査)で結核菌かMACかを比較的早く見分けることができます。

日本の診断基準では、一般的には、

異なる2回以上の喀痰検体でNTMが培養陽性

となることなどが細菌学的診断基準になります。

1回以上の気管支洗浄液・肺胞洗浄液で培養陽性の場合などでも基準を満たします。

抗酸菌培養は普通の細菌培養より時間がかかります。

また、

「咳は出るけれど痰が出ない」

という方も少なくありません。

その場合には病状によって、誘発痰や気管支鏡検査などを検討します。

MAC抗体検査

肺MAC症では、

抗GPL-core IgA抗体(MAC抗体)

という血液検査を診断の補助に使用することがあります。

2024年に改訂された日本の診断指針では、肺MAC症の初回診断時に限り、一定の条件下で、

喀痰培養1回陽性+MAC抗体陽性

による暫定的診断基準も設けられました。

ただし、この基準は日本独自の暫定基準であり、その後も可能な限り喀痰検査を続けることが推奨されています。


肺MAC症と診断されたら、すぐ治療するの?

肺MAC症について最も知っていただきたいポイントの一つです。

肺MAC症と診断された後、治療を考えやすい場合と経過観察になることもある場合の比較図

診断された=すぐ薬を飲む、ではありません

肺MAC症では、治療を始めると複数の抗菌薬を長期間使用します。

そのため、

  • 症状がどの程度あるか
  • 肺に空洞があるか
  • 病変がどの程度広がっているか
  • 画像が悪化しているか
  • 喀痰中の菌量
  • 年齢
  • 体重や栄養状態
  • 合併症
  • 薬の副作用リスク
  • 患者さん自身の希望

などを総合して、治療を始めるかどうかを判断します。

国内外のガイドラインでも、肺NTM症の診断基準を満たした患者さん全員に、直ちに抗菌薬を開始するわけではありません。

治療を積極的に考えることが多い場合

例えば、

  • 肺に空洞がある
  • 抗酸菌塗抹検査が陽性
  • 咳・痰・血痰などの症状が強い
  • 体重が減少している
  • レントゲンやCTで悪化している
  • 病変の範囲が広い

といった場合には、治療開始をより積極的に検討します。

経過観察になることもあります

一方、

  • 症状がほとんどない
  • 病変が軽い
  • 長期間画像がほとんど変化していない
  • 治療による負担が大きい

といった場合には、すぐ治療を始めず定期的に経過を見ることがあります。

「治療しない」=「放置する」ではありません

ここが重要です。

経過観察を選択した場合でも、症状、体重、胸部画像、喀痰検査などを病状に応じて確認します。

経過観察中に大切にしていること

経過観察の期間は「何もしない時間」ではありません。当院では次のような点を大切にしています。

  • 定期的な画像・喀痰の確認:病状に応じて、数か月~1年ごとを目安に胸部画像や喀痰検査で変化を確認します
  • 体重・栄養状態のチェック:体重減少は病気の進行のサインになることがあります
  • 痰を出しやすくする工夫:気管支拡張症を伴う方では、去痰薬や排痰の方法も相談します
  • ワクチン:インフルエンザ、肺炎球菌、新型コロナなどのワクチンで、ほかの呼吸器感染症による悪化を予防します
  • 治療開始のタイミングの見直し:悪化がみられた場合には、治療開始を改めて相談します

肺MAC症では、

「早く薬を始めること」より、「治療するべき状態なのかを適切に判断すること」

が重要な場合があります。

私は外来でも、

「肺MAC症だから薬を飲みましょう」

だけではなく、

今治療を始めるメリットと、長期間治療する負担の両方を患者さんと相談すること

を大切にしています。


肺MAC症はどのように治療する?

マクロライドが有効な肺MAC症では、基本的に、

マクロライド系抗菌薬
+エタンブトール
+リファンピシン

の3剤を組み合わせて治療します。

マクロライドにはアジスロマイシンやクラリスロマイシンがあります。

病型によって毎日服用する場合と週3回の治療になる場合があります。

国際ガイドラインでは、空洞を伴わない結節・気管支拡張型では週3回、空洞を伴う場合や進行した病変では毎日治療する方法が提案されています。

また、空洞がある場合や病変が広範囲に及ぶ重症例では、治療初期に注射のアミカシンやストレプトマイシンを併用することがあります。

日本では、日本結核・非結核性抗酸菌症学会の「成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解」も参考に治療方針を決めています。


なぜ何種類もの薬を使うの?

重要な理由の一つが、

薬剤耐性を防ぐため

です。

特に肺MAC症では、治療の中心となるマクロライドが効かなくなってしまうと、その後の治療が難しくなります。

そのため、

肺MAC症に対するマクロライド単剤治療は原則として避けます。


肺MAC症の治療期間は?

肺MAC症の治療は長期間になります。

一般的には、

喀痰培養が陰性化してから、さらに少なくとも12か月

治療することが推奨されています。

菌が陰性になるまでの期間も含めると、治療が1年半~2年以上になることもあります。

だからこそ、

「診断したからとりあえず治療する」

ではなく、今治療を始めるメリットと治療による負担を考えることが大切です。


治療薬にはどんな副作用がある?

長期間複数の薬を使用するため、副作用のチェックも重要です。

エタンブトール

視神経障害による視力低下や色覚異常に注意します。治療中は眼科での定期的な確認をおすすめします。

リファンピシン

肝機能障害に注意します。

また、尿・汗・涙などがオレンジ色になることがありますが、薬の性質によるもので心配はいりません(ソフトコンタクトレンズが着色することがあります)。

リファンピシンはほかの薬の効き目に影響しやすい薬です。血液をサラサラにする薬、糖尿病の薬、降圧薬、ステロイドなど、多くの薬と相互作用があります。ほかの医療機関で処方されている薬がある方は、必ずお薬手帳をお持ちください。

マクロライド系抗菌薬

胃腸症状、肝機能障害、QT延長(心電図の異常)などがあります。

アミカシン

聴力障害、耳鳴り、腎機能障害などに注意します。

治療中には診察や採血、眼科・聴力の評価などを必要に応じて行います。


難治性肺MAC症に使われる「アミカシンリポソーム吸入(ALIS)」とは?

近年の肺MAC症治療で大きな変化の一つが、

アミカシンリポソーム吸入懸濁液
(ALIS:商品名 アリケイス®)

の登場です。

アミカシンは以前から使用されてきた抗菌薬です。

ALISでは、アミカシンを「リポソーム」という小さな粒子の中に封入し、専用のネブライザを使って肺へ直接吸入します。

リポソーム化されたアミカシンは、痰やバイオフィルムを通過し、肺の病変へ薬を届けることを目的としています。

ALISは肺MAC症なら誰でも使える?

いいえ。

2026年9月現在、日本では肺MAC症と診断された患者さん全員に、最初から使用する薬ではありません。

最新の添付文書では、

「肺MAC症に対する多剤併用療法による前治療において効果不十分な患者」

に使用が限定されています。

成人では通常、アミカシンとして590mgを1日1回、専用のラミラネブライザシステムを使用して吸入します。

また、ALISだけで治療するのではなく、他の抗菌薬による多剤併用療法と組み合わせます。

どんな場合にALISを考える?

代表的なのは、

適切な多剤併用療法を続けても、喀痰培養からMACが消えない場合

です。

国際ガイドラインでは、ガイドラインに沿った治療を少なくとも6か月続けても喀痰培養陽性が続く肺MAC症に対して、ALISを追加することが推奨されています。

いわゆる、

難治性・治療抵抗性肺MAC症

に対する治療選択肢です。

ALISはどのくらい効くの?

難治性肺MAC症を対象とした国際共同第III相試験(CONVERT試験)では、治療6か月までの喀痰培養陰性化率は、

  • ALIS+従来の多剤併用療法:29.0%
  • 多剤併用療法のみ:8.9%

でした。

従来治療だけでは菌が消えなかった患者さんの一部で、ALISの追加によって喀痰培養陰性化が期待できることが示されています。

もちろん、

ALISを使えば全員の菌が消えるわけではありません。

菌の薬剤感受性、病変の状態、空洞の有無、それまでの治療歴なども含めて判断します。

ALISの副作用は?

吸入薬だから副作用がないというわけではありません。

特に、

  • 声がかすれる、声が出しにくい
  • 咳
  • 息苦しさ
  • 喉の痛み
  • 気管支痙攣
  • 血痰・喀血

などがみられることがあります。

またアミカシンですので、

  • 耳鳴り
  • 聴力障害
  • 腎機能障害

にも注意します。

臨床試験では、発声障害や咳などが比較的多く報告されています。

当院でのALISの対応について

当院では、ALISの導入は行っていません。

ALISを検討する段階の肺MAC症では、菌の薬剤感受性、空洞の有無、病変の広がりなどを詳しく調べたうえで、治療方針を決める必要があります。

そのため、多剤併用療法を続けても菌が消えない場合や、ALISが必要と考えられる場合には、専門的な検査・治療ができる基幹病院をご紹介しています。大きな病院できっちり精査していただくことが重要だと考えています。


2026年、ALISに新しい研究結果が出ました

2026年には、肺MAC症治療について注目すべき新しい研究結果も発表されました。

これまでALISは主に、

従来の治療で十分な効果が得られなかった患者さん

に使用されてきました。

しかし第IIIb相ENCORE試験では、新たに肺MAC症と診断され、まだ抗菌薬治療を受けていない患者さんを対象に、

  • ALIS+アジスロマイシン+エタンブトール
  • プラセボ(有効成分を含まない吸入)+アジスロマイシン+エタンブトール

が比較されました。なお、この試験の併用薬は2剤で、リファンピシンは含まれていません。

主要評価項目である13か月時点の呼吸器症状スコアは、ALIS群で統計学的に有意な改善を示しました(ただし両群の差は大きくはありません)。

副次評価項目である6か月時点の喀痰培養陰性化率は、

  • ALIS群:87.8%
  • 対照群:57.0%

でした。

これは、

将来的にALISを肺MAC症のより早い段階から使用する可能性

を示す興味深い結果です。

ただし、現時点の日本の適応は変わっていません

ここは非常に重要です。

2026年9月現在、日本の添付文書上ではALISは、

多剤併用療法による前治療で効果不十分だった肺MAC症

に限定されています。

製造販売元は、日本での適応拡大に向けてENCORE試験のデータを2026年後半にPMDAへ提出する予定としています。

つまり、

新しい研究で良い結果が出たこと

と、

今、日本の保険診療で使用できる範囲

は分けて考える必要があります。

今後の承認状況やガイドラインの変化には注目したいところです。


肺MAC症は治るの?

「肺MAC症は治りますか?」

という質問もよく受けます。

治療によって喀痰培養が陰性化し、その状態を維持できる患者さんもいます。

一方で、

  • 治療をしてもなかなか菌が消えない
  • 治療終了後に再発する
  • 別のMACに再感染する

といったこともあります。

NTMは私たちの身の回りの環境に広く存在します。

そのため、一度治療が成功しても二度と感染しないとは限りません。

治療終了後も、病状に応じて定期的に経過を確認することが大切です。


肺MAC症の予後・寿命は?

肺MAC症は、

すべての患者さんが同じように進行する病気ではありません。

何年もほとんど変化しない患者さんもいますし、空洞形成などを伴い徐々に進行する患者さんもいます。

したがって、

「肺MAC症になったら寿命が何年短くなる」

と一律に説明できる病気ではありません。

病状を考えるうえでは、

  • 空洞の有無
  • 病変の広がり
  • 体重・栄養状態
  • 年齢
  • 他の肺疾患
  • 原因菌
  • 治療への反応

などを合わせて評価する必要があります。

大切なのは、

「肺MAC症という病名」だけではなく、その人の肺MAC症が今どのような状態なのか

を見ることです。


肺MAC症の日常生活で気をつけることは?

食事は?

「MACに効く食べ物」というものはありません。

一方、肺NTM症では痩せ型の患者さんも多く、病気が進行すると体重が減少することがあります。

過度な食事制限をするより、

十分に食事を取り、体重や筋肉量を維持すること

が大切な場合があります。

ガーデニングはやめるべき?

NTMは土壌にも存在します。

だからといって、

肺MAC症の患者さん全員がガーデニングを禁止しなければならない

という十分な根拠があるわけではありません。

土ぼこりを大量に吸うような作業では、

  • マスクを使用する
  • 乾いた土は少し湿らせてから扱う
  • 土ぼこりをなるべく吸わない

といった工夫を考えてもよいでしょう。

生活の楽しみを過度に制限せず、病状に応じて主治医と相談してください。

シャワーやお風呂は大丈夫?

NTMはシャワーヘッドや水回りからも検出されます。

しかし、

肺MAC症になったらシャワーを使ってはいけない

ということではありません。

NTMは環境中に広く存在するため、感染を完全に防ぐことは難しいとされています。

そのうえで、水回りの菌を減らす工夫として、

  • シャワーヘッドを定期的に掃除・交換する
  • 入浴中・入浴後は浴室の換気をしっかり行う
  • 24時間風呂(循環式浴槽)は菌が増えやすいため、使用や管理方法に注意する
  • 加湿器はこまめに水を替え、タンクを清掃する

といったことが考えられます。

ただし、生活を過度に制限してしまうより、必要な診察や検査を継続することの方が重要です。


肺NTM症・肺MAC症についてよくある質問

Q.肺MAC症は結核ですか?

違います。

どちらも「抗酸菌」というグループの菌による病気ですが、原因菌や感染の仕方が異なります。

一般的な肺MAC症は、結核のように人から人へ感染する病気ではありません。

Q.家族にうつりますか?

通常の肺MAC症であれば、基本的には心配ありません。

家族と食事や部屋を分ける必要もありません。

Q.肺MAC症と診断されたら、必ず薬を飲む必要がありますか?

必ずしもそうではありません。

症状、画像、空洞の有無、喀痰検査、病気の進行速度、年齢、副作用リスクなどを総合して判断します。

Q.血液検査だけで肺MAC症を診断できますか?

できません。

MAC抗体は診断の補助になりますが、胸部画像や喀痰培養などと組み合わせて判断します。

Q.ALISは肺MAC症なら最初から使えますか?

2026年9月現在の日本では、原則として最初から使用する薬ではありません。

多剤併用療法による前治療で十分な効果が得られなかった肺MAC症が現在の適応です。

Q.辻医院でALISの治療は受けられますか?

当院ではALISの導入は行っていません。

ALISが必要と考えられる場合には、基幹病院をご紹介し、詳しい精査と治療方針の検討をしていただきます。

Q.肺MAC症の治療は何年くらいかかりますか?

一般的には、喀痰培養が陰性になってから、さらに少なくとも12か月治療します。

菌が陰性になるまでの期間も含めると、1年半~2年以上になることもあります。

Q.治療中、尿がオレンジ色になりました。大丈夫ですか?

リファンピシンという薬の影響で、尿や汗、涙がオレンジ色になることがあります。薬の性質によるもので、通常は心配ありません。気になる症状があれば主治医にご相談ください。


呼吸器専門医としてお伝えしたいこと

最近、厚生労働省による啓発や報道によって、NTM症・肺MAC症について知る方が増えてきました。

病気の存在を知っていただくことは、とても大切です。

一方で、

「咳が続いているから、自分も肺MAC症ではないか」

と必要以上に不安になる必要はありません。

肺NTM症・肺MAC症は、

菌が出たらすぐ薬を飲めばよい

という単純な病気ではありません。

反対に、

ゆっくり進む病気だから放っておいてよい

とも限りません。

大切なのは、

  • 本当に肺NTM症なのか
  • どの菌なのか
  • 病変はどの程度なのか
  • 進行しているのか
  • 今、治療するメリットがあるのか

を一つずつ確認することです。

肺MAC症では治療そのものが1年以上に及ぶ場合があります。

だからこそ私は、

「薬を使うか、使わないか」だけでなく、「今は治療する時期なのか、それともきちんと経過をみる時期なのか」

を患者さんと一緒に考えることが重要だと思っています。

さらに、従来の治療で菌が消えない患者さんにはALISという選択肢もあり、2026年にはその使い方が今後さらに広がる可能性を示す新しい研究結果も発表されています。

肺MAC症の治療は、現在も少しずつ進歩しています。


京都市伏見区・醍醐周辺で長引く咳や肺MAC症が気になる方へ

辻医院は京都市伏見区醍醐にある内科・呼吸器内科です。

当院では呼吸器専門医が、

  • 長引く咳
  • 痰
  • 血痰
  • 健康診断での胸部レントゲン異常
  • 気管支拡張症
  • 肺NTM症
  • 肺MAC症の経過観察

などの診療を行っています。

当院では胸部レントゲン、血液検査、喀痰検査(抗酸菌の塗抹・培養・PCR検査)などを行うことができます。

CTや気管支鏡などの精密検査、より専門的な治療が必要と判断した場合には、連携する医療機関をご紹介します。

肺MAC症の多剤併用療法も、病状に応じて当院で行っています。一方、ALISの導入は当院では行っていません。重症の方や、治療を続けても菌が消えない方は、基幹病院で詳しく精査していただくことが重要と考え、責任をもってご紹介します。

「ニュースでNTM症を知って、自分の長引く咳が気になった」

「健康診断で肺に影があると言われた」

といった場合もご相談ください。

受診の際は、健康診断の結果や、これまでに撮影した胸部画像(CD-Rなど)、お薬手帳をお持ちいただくと診察がスムーズです。

→ 長引く咳でお困りの方へ

→ 辻医院の呼吸器内科

肺MAC症・長引く咳のご相談

咳や痰が続く方、健康診断で胸部の異常を指摘された方、肺MAC症の経過観察について相談したい方はご予約ください。


参考文献・参考情報


※この記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。実際の診断・治療方針は、症状、画像所見、原因菌、薬剤感受性、年齢、合併症などによって異なります。

執筆・監修
辻 泰佑
医療法人緑萌会 辻医院
日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医

最終更新:2026年9月27日

気になる症状があれば、お気軽にご相談ください

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