• 12月 21, 2024

急性咳嗽

咳嗽:慢性咳嗽と急性咳嗽

咳が止まらない…そんな経験はありませんか? 多くの人が経験する「咳」ですが、その原因は様々で、放置すると日常生活に支障をきたすことも。実は、日本人の約20%が何らかの咳に悩まされているというデータも存在します。この記事では、突然始まる急性咳嗽に焦点を当て、その原因となるウイルス感染や細菌感染、アレルギー、環境要因などを分かりやすく解説します。 風邪かな?気管支炎?それとも…と不安に思う前に、咳の種類や症状、持続時間などから原因を探るヒントを5つのポイントに絞ってお伝えします。 さらに、効果的な治療法や自宅でできる対処法も4つの項目でご紹介。 まるで、体の中の小さな掃除屋さんのように働く咳のメカニズムを知り、適切なケアで、あなた自身の健康を守りましょう。

長引く咳を、咳の持続する期間から3つに分類しています。咳が出てから3週間未満を急性咳嗽、3~8週間の遷延性咳嗽、そして8週間以上が慢性咳嗽です。遷延性咳嗽、慢性咳嗽は胸部レントゲン写真や聴診所見で異常がないものをいいます。
長引く咳の原因には、咳喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎・肺炎といった感染症、腫瘍性疾患、間質性肺炎などが挙げられますが、時に診断が難しい事があります。

急性咳嗽について

急性咳嗽の主な原因と症状の特徴5つ

咳は、体にとって大切な防御反応です。まるで、体の中の小さな掃除屋さんです。しかし、咳が続くと、日常生活に支障をきたすだけでなく、体力を消耗し、睡眠不足にもつながるなど、心身ともに大きな負担となります。

急性咳嗽は、多くの場合、突然始まり、だいたい3週間以内に治まります。今回は、急性咳嗽の主な原因と症状の特徴について、5つのポイントに絞ってわかりやすくお話しします。

ウイルス感染による急性咳嗽の影響

急性咳嗽の最も多い原因はウイルス感染です。風邪やインフルエンザなどのウイルスが、鼻や喉、気管支などの気道に入り込み、炎症を起こすことで咳が生じます。まるで、ウイルスという小さなモンスターをやっつけるために、体が一生懸命戦っている証拠です。

ウイルス感染による急性咳嗽の特徴は、初期には乾いた咳で始まり、徐々に痰が出る湿った咳に変化していくことが多いです。咳以外にも、鼻水、鼻詰まり、のどの痛み、発熱、倦怠感、頭痛、関節痛などの症状を伴う場合もあります。

ウイルスは咳やくしゃみによって空気中に飛散し、他の人へ感染を広げます。特に、閉鎖された空間や人が密集している場所では、感染リスクが高まります。例えば、満員電車の中や、換気の悪い会議室などは要注意です。咳エチケットを徹底し、周りの人への感染を防ぐことが重要です。

特徴説明
咳の種類最初は乾いた咳、次第に痰が出る湿った咳に変化
他の症状鼻水、鼻詰まり、のどの痛み、発熱、倦怠感、頭痛、関節痛など
持続期間通常3週間以内
感染経路飛沫感染、接触感染
注意点咳エチケット(マスクの着用、咳やくしゃみをティッシュや肘で覆うなど)の徹底

細菌感染による急性咳嗽の症状

細菌感染も急性咳嗽の原因となります。ウイルス感染と比べると、細菌感染による咳は症状が重く、長引く傾向があります。細菌性肺炎など、重篤な合併症を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。

細菌感染による急性咳嗽の特徴は、黄色や緑色の濃い痰が出る、高熱が出る、息苦しさを感じる、胸が痛む、などです。このような症状が出ている場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

私自身も、診療の現場で、細菌性肺炎を併発した急性咳嗽の患者さんを数多く診てきました。初期症状が風邪に似ているため、自己判断で様子を見てしまい、症状が悪化してから来院されるケースも少なくありません。咳が長引く、痰の色がおかしい、息苦しい、などの症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診することをお勧めします。

特徴説明
咳の種類湿った咳、黄色や緑色の濃い痰
他の症状高熱、息苦しさ、胸の痛み、倦怠感など
持続期間ウイルス感染より長引く場合も
合併症のリスク肺炎、気管支炎など

マイコプラズマ肺炎も、細菌感染によって引き起こされます。咳に加えて、高熱や呼吸困難、倦怠感などの症状が現れることが特徴です。マイコプラズマ肺炎は、特に子どもや若い人に多く見られます。

アレルギーや環境要因による急性咳嗽の特徴

アレルギー反応や、タバコの煙、ほこり、乾燥した空気、大気汚染物質、化学物質などの環境要因も、急性咳嗽を引き起こすことがあります。まるで、体がこれらの刺激に敏感に反応して、咳というサインを出しているかのようです。

アレルギーによる咳は、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどのアレルギー症状とともに現れることが多いです。また、特定の物質(花粉、ハウスダスト、ペットの毛、ダニなど)に曝露されることで咳の症状が現れます。アレルギー性咳嗽の治療には、抗ヒスタミン薬や吸入ステロイド薬などが用いられます。

環境要因による咳は、特定の場所にいたり、特定の物質にさらされたときに咳が出ます。例えば、タバコの煙が多い場所にいくと咳が出たり、乾燥した空気で咳き込んだり、大気汚染がひどい日に咳が出やすくなったりすることがあります。このような場合は、原因となる環境を避けることが重要です。また、マスクを着用したりすることで、症状を軽減できる場合もあります。

原因説明
アレルギー花粉、ハウスダスト、ペットの毛、ダニ、食物など春先に咳が出る、ペットを飼っているときだけ咳が出る
環境要因タバコの煙、ほこり、乾燥した空気、大気汚染物質、化学物質、温度変化などタバコを吸うと咳が出る、寒い日に咳が出る

咳が3週間以上続く場合は、慢性咳嗽の可能性があります。慢性咳嗽の原因は様々で、咳喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群などが挙げられます。慢性咳嗽の場合は、医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。

治療について

薬物療法の種類と効果

急性咳嗽の治療は、その原因によって大きく異なります。風邪などのウイルス感染が原因の場合は、対症療法といって、咳などの症状を抑える治療が中心となります。細菌感染が原因の場合は、抗菌薬(抗生物質)を使って原因菌を退治する必要があります。アレルギーが原因の場合は、抗アレルギー薬を使ってアレルギー反応を抑える治療を行います。

咳を鎮める薬には、中枢性鎮咳薬と末梢性鎮咳薬の2種類があります。中枢性鎮咳薬は、脳にある咳中枢に直接作用して咳を鎮めます。効果は強いのですが、眠気や呼吸抑制などの副作用が出る可能性もあるため、注意が必要です。医師は、患者さんの年齢や症状、持病などを考慮して、最適な薬を選択しています。末梢性鎮咳薬は、気道の知覚神経に作用して咳を鎮めます。中枢性鎮咳薬に比べて副作用が少ないため、比較的安全に使用できます。

痰を出しやすくする薬には、粘液溶解薬と去痰薬があります。粘液溶解薬は、痰の粘り気を薄くして出しやすくします。去痰薬は、気道の線毛運動を活発にして痰の排出を促します。これらの患者さんの痰の状態に合わせて、これらの薬を使い分けています。

薬の種類効果使用上の注意点
鎮咳薬咳中枢を抑えて咳を鎮めるデキストロメトルファン、コデイン眠気、呼吸抑制
去痰薬痰を出しやすくするアンブロキソール、カルボシステイン胃部不快感
抗生物質細菌感染を治療するアモキシシリン、クラリスロマイシン下痢、アレルギー反応
抗アレルギー薬アレルギー反応を抑えるロラタジン、フェキソフェナジン眠気、口の渇き

まとめ

急性咳嗽は多くの場合、ウイルス感染が原因で、3週間以内に治まります。初期は乾いた咳ですが、痰を伴う湿った咳に変化することもあります。細菌感染による場合は、黄色や緑色の痰、高熱、息苦しさなどが特徴で、早期の医療機関受診が重要です。アレルギーや環境要因も原因となり得ます。

治療法としては、原因に応じた薬物療法が中心です。咳止め、去痰薬、抗生物質、抗アレルギー薬などがあります。自宅では、水分を十分に摂る、安静を保つ、加湿器を使用するなどの対処法が有効です。

咳が長引く、または強い症状がある場合は、迷わず医療機関を受診してください。適切な治療を受けることで、早く元気な状態に戻れるようサポートします。

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