- 11月 9, 2025
高齢者のRSウイルス感染に注意!インフルエンザ並みに危険?|京都市伏見区醍醐 辻医院が解説
🦠高齢者の「RSウイルス感染症」――インフルエンザ並みに注意が必要です!
辻医院の副院長の辻です。
寒くなり咳でお困りの患者さんの受診が増えてまいりました。
夜間、咳で目が覚めてしまい、睡眠不足になると仕事や学校に支障が出ますね。日常生活にも大きく影響する咳ですが、その中でも予防が可能なRSウイルスについて解説したいともいます。
当院は京都市伏見区醍醐合場町にある、呼吸器内科を中心とした内科医院です。
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「RSウイルス(RSV)」という名前、聞いたことがありますか?
多くの方は「赤ちゃんがかかる風邪」と思っているかもしれません。
しかし、近年、高齢者でもRSウイルスが肺炎や呼吸不全を起こすケースが増えています。
実際、日本の研究ではRSウイルスはインフルエンザと同等か、それ以上に重症化しやすいことがわかってきました。
今回は最新の日本の調査結果をもとに、RSウイルス感染症の実態と、重症化しやすい人・ワクチンの対象者についてまとめます。
RSウイルスとは?
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、
咳や鼻水を引き起こす呼吸器ウイルスの一種です。
感染経路は主に飛沫(つばなどのしぶき)と接触によるものです。
潜伏期間は4~6日で、最初は軽い風邪のような症状から始まります。
しかし、高齢者では肺炎や気管支炎に進行し、入院が必要になることもあります。
過去の典型的なパターンでは、RSVは秋から冬にかけて流行し、ピークは12〜1月頃、終了は3〜4月頃という報告があります。
しかし近年はこのパターンに変化がみられ、2017年以降は「夏~秋」に流行開始が早まっているという報告です。また、COVID-19パンデミック以降は流行の時期・規模ともに 例年通りではなく予測が難しいという報告もあります。
■ 日本の外来高齢者での実態(Ohbayashiら, 2024)
2021~2023年に全国の医療機関で行われた調査によると、
60歳以上の外来患者923人のうち、2.5~2.8%がRSウイルス陽性でした。
感染した高齢者のうち約4割が下気道炎(気管支炎・肺炎)を発症していました。咳や痰が強く、回復まで平均2~3週間かかったと報告されています。
生活の質(QOL)も一時的に低下し、特に「咳・息苦しさ」を伴う人で回復が遅れる傾向がありました。
また国内の別の報告を見てみましょう。インフルエンザと比較した成人でのRSウイルスの影響についてです。
■ 入院患者ではインフルエンザ以上のリスク(Inoueら, 2025)
全国56,980人の成人入院データを解析した結果、RSウイルス感染者はインフルエンザ患者より重症化・再入院しやすいことが示されました。
| 指標 | RS | インフルエンザ | |
| 人工呼吸器使用 | 9.7% | 7.0% | 1.35倍 |
| 入院中死亡率 | 7.5% | 6.6% | 同等 |
| 1年以内再入院 | 34.0% | 28.9% | 1.19倍 |
| 1年以内の全死亡 | 12.9% | 10.3% | 1.17倍 |
特に60歳以上では、
・院内死亡
・退院後再入院
・1年以内の死亡
すべての項目でインフルエンザよりリスクが高くなっていました。
⚠️ RSVは「入院して終わり」ではなく、退院後の体力低下・再入院リスクが問題になります。
■海外の報告(米国データとの比較)
アメリカを中心とした報告では、60歳以上のRSV感染は年間520万人(うち入院47万人、死亡1万人超)と推定されています。これは高齢者インフルエンザに匹敵する規模です。
日本ではまだ公式統計が整っていませんが、人口構造と感染報告から推定すると、年間約70万人の高齢者がRSVに感染し、約6万人が入院していると考えられています。
日本では少子高齢化により、RSV感染の「高齢者問題化」が今後さらに進むと予測されます。
■ RSVで重症化しやすい人の特徴
米国CDCや日本感染症学会の報告を総合すると、
以下のような方は特に注意が必要です。
リスク因子 解説
🧓 高齢者(60歳以上) 特に75歳以上は免疫力低下・呼吸機能低下が重なる
💨 COPD・喘息・気管支拡張症など 基礎疾患があると咳・痰悪化しやすい
❤️ 心不全・高血圧・虚血性心疾患 呼吸負担で循環器症状が悪化する
🩸 糖尿病・腎不全 免疫低下により感染重症化
💊 ステロイド・免疫抑制薬使用中 ウイルス排除が遅れ、肺炎リスク上昇
🏠 介護施設入居者 集団感染・再感染のリスクが高い
✅ これらの条件に当てはまる方は、RSウイルスワクチン接種の有力な対象です。
■ ワクチンで予防できる時代へ
2023年、日本でも高齢者向けRSウイルスワクチンが承認されました。現在2種類のワクチンが使用可能です。
Arexvy(アレックスビー)®(グラクソ・スミスクライン)
Abrysvo(アブリスボ)®(ファイザー)
海外臨床試験では、
RSウイルスによる下気道感染を約80%予防
基礎疾患がある場合は約90%減少
と非常に高い効果が示されています。
📍接種を検討すべき人
- 60歳以上の方
もしくは50歳以上で - COPD・喘息・心不全・糖尿病などの慢性疾患がある方
- 介護施設・デイサービスなど集団生活の方
- 冬季に咳や肺炎を繰り返す方
- 家族に乳幼児がいる方(感染伝播防止にも有効)
ワクチンの効果は2-3年持続すると考えられていますが、長期成績は今のところ不明です。
追加接種の必要性などは今後明らかになってきます。
検査方法&検査の適応
RSウイルス特有の症状・所見はなく、コロナやインフルエンザ、パラインフルエンザ、ヒトメタニューモウイルスなどと区別するには検査が必要です。
検査にはPCRや抗原検査がありますが、成人の場合
- 免疫健常成人:診断が治療方針に影響する場合に検査を考慮
- 免疫不全成人:HCT・肺移植などでは発熱・呼吸器症状があれば検査を考慮
とされており、クリニックの外来で成人の方に検査を行うことはあまりありません。
💉治療方法
RSウイルスに対して効果の認められた抗ウイルス薬は存在しません。
海外ではリバビリンが用いられることがあるようですが本邦では保険適応外になります。
症状に応じた対症療法となります。
■ まとめ
RSウイルスは一般の方にはまだまだ認知度の低いウイルスではありますが、インフルエンザと同程度もしくはそれ以上に影響のあるウイルスと考えられています。
RSウイルス感染症は今や高齢者の重要な呼吸器疾患です。
治療薬がないからこそしっかりと予防を。
そのためにはワクチン接種が重要です。
基礎疾患をお持ちの方はRSウイルスワクチン接種の検討をおすすめします。
お願い
発熱・咳・痰などの風邪や感染症を疑う患者さんは発熱外来にご案内しております。
当院は小さな診療所ではありますが、院内感染を少しでも防ぐために、動線の分離やゾーニング、予約制の導入など、可能な限りの対策を継続しています。
これからも「安心できるクリニック」であるために
当院は「地域のかかりつけ医」として、感染症も慢性疾患も含めてすべての患者さんが安心して受診できる空間づくりに努めております。
お手数をおかけしますが、事前のご予約・ご連絡をお願いします。
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