- 1月 22, 2026
- 1月 23, 2026
運動すると咳や息切れが出る方へ― 運動誘発性気管支収縮(EIB)について ―
「走ると咳が止まらない」
「運動のあとに息が苦しくなる」
「体育や部活がつらい」
このような症状がある方は、運動誘発性気管支収縮(Exercise-Induced Bronchoconstriction:EIB)が関係している可能性があります。
若い方でこのようなご相談を受けることがございます。高いレベルで真剣に競技に打ち込んでいる方ほど悩まれているように感じます。
当院は京都市伏見区醍醐合場町にある、呼吸器内科を中心とした内科クリニックです。
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車の場合は六地蔵駅から5分、山科駅から15分、京阪宇治駅からも15分です。
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はじめに
運動誘発性気管支収縮(exercise-induced bronchoconstriction:EIB)とは、運動中、あるいはより多くの場合は運動終了後数分以内に急性に出現する気管支収縮になります。
「運動誘発性喘息(exercise-induced asthma)」という用語も用いられていましたが、運動そのものは喘息の独立した危険因子ではなく、身体活動の低下が喘息発症のリスクとなり、運動が小児における喘息発症を予防する可能性があるとのの報告もあります。運動が喘息を引き起こすという誤解を与える可能性が有り、現在はEIBという用語が一般的となっています。
どれくらいの人がEIB?
一般集団におけるEIBの有病率は約5~20%と推定されています。喘息患者さんだけだと90%ともいわれます。
なぜ起きる?
運動時に分時換気量が増加します。
EIBは、運動時に大量に吸入される比較的冷たく乾燥した空気によって引き起こされる気道生理の変化が原因と考えられています。
実際に、加温加湿された空気を吸うことで症状が改善することも報告されています。このため、乾燥したり冷たい空気の吸入により、気道表面の浸透圧変化が気管支攣縮の原因とされています。
その他に
- ロイコトリエン、ヒスタミン、IL-8などの気管支収縮性・炎症性メディエーターが増加
- Th2型リンパ球の活性化が起こり、IgE産生および好酸球活性化を促進する
ということも報告されています。
呼気一酸化窒素(FeNO)は、喘息診断では有名ですが、EIBにおいてはあまり相関がないことも報告されています。
どんな症状が出るの??
EIBでは、運動開始後6~8分間はアドレナリンが増加することによると思われる一過性の気管支拡張がみられることが多いとされています。
その後、運動終了後にアドレナリンが減少するとともに気管支収縮が始まり、10~15分でピークに達し、60分以内に自然軽快とされています。
典型的症状は、運動誘発性喘息といわれていたくらいなので
- 息切れ
- 胸部圧迫感
- 咳嗽
となります。
診断はどうするの?
EIBの診断は、運動による症状の出現と、運動またはそれに近い状態を作り出すことで可逆性の気流制限(喘息と同じ気管支拡張薬による症状・肺機能の改善)が生じることを確認、することが最も医学的には正確な診断方法ですが、なかなか現実は難しく、診断的治療(薬が効けばそうなのだろう)を行うことがほとんどだと思います。
治療
主要な目標は、EIBのために運動を避けることがないようにすることです。
ウォームアップをゆっくり行う、練習内容を調整する、お薬の吸入手技・きちんと使用することができているかを見直します。大きく分けて薬以外の方法と薬によるものが挙げられます。
薬を使わない方法
先ほど述べたように
- 分時換気量の大きさ
- 吸入空気の温度および湿度
が重要です。心肺機能が強くなれば、同じ運動でも必要な酸素量は減ってきます(分時換気量低下)。しかし、運動強度を上げると症状が出てしまうので、なかなか簡単ではありません。まずは、寒冷・乾燥した状況であれば(冬場は特に)場合は、マスクで口鼻を覆い、吸気を加温・加湿するようにしましょう。もちろんマスクをするとしんどいとは思いますが・・・
運動前ウォームアップが症状の緩和に有効であるか一致した見解は有りませんが、いきなり高強度の運動を始めるよりもいいのでは?と個人的には思います。十分なウォームアップを心掛けましょう。
薬を使った治療
一般に、喘息コントロール不良に伴ってEIBが頻発する場合、重要なことはは喘息コントロールの改善となります。このため吸入ステロイド(ICS)やロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)が有用とされています。EIBが唯一の症状(運動時だけ症状が出現する場合)の場合、医学的にしっかりとエビデンスのある治療は有りませんので、喘息治療に準じて治療を行います。
運動前に
短時間作用性β2刺激薬(SABA)(サルタノール、メプチンなど)は、EIBに対する重要な薬剤です。
運動5~20分前の予防投与として、SABA吸入が推奨されています。
β刺激薬の頻回使用は耐性(効果減弱)が起こるとされています。喘息の存在がハッキリとわかっている場合、SABA単独の治療は推奨されません(禁忌)ので、吸入ステロイドを含んだベースの喘息治療の強化が必要です。その上で運動前のSABA吸入を行います。
その他に
ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)
抗コリン薬(イプラトロピウムなど)
も選択肢となります。
アンチドーピングについて
アスリートもEIBで悩まれることが多いと思います。ステロイドと聞いてドーピングについて心配な方もおられるでしょう。多くの吸入ステロイドはWADAのTUE(治療使用特例;詳しくはこちら)不要とされています。しかし一部の吸入薬ではTUEが必要となるため、処方を受ける際は医師に確認しましょう。全身ステロイド(飲み薬)は競技中禁止で、TUEが必要な場合もあります。LTRAはTUE不要とされています。詳しくはJADA(日本アンチドーピング機構)のHPを確認下さい。日本水泳連盟アンチドーピング委員会からぜんそく治療薬についてまとめたものが出ておりますのでこちらもご参照ください。
- 世界アンチ・ドーピング機構の喘息治療に関する部分を抜粋すると以下のようになります。
吸入アルブテロール(最大1600 µg/24h、800 µg/12h)
吸入ホルモテロール(最大54 µg/24h)
吸入サルメテロール(最大200 µg/24h)はTUE不要。
尿中濃度:アルブテロール>1000 ng/mL、ホルモテロール>40 ng/mLは治療域超過と判断。 - 吸入ステロイド、LTRA、オマリズマブは許可。
全身ステロイドは競技中禁止。
まとめ
- EIBは、基礎に喘息を有する患者で、運動後に起こる一過性の気管支収縮
- 回避策:体力向上、寒冷乾燥環境の回避・加温加湿。
- 薬物療法:SABA吸入と喘息治療強化。
- 運動前予防:SABAまたはICS/ホルモテロール(シムビコート・ブデホル)