- 6月 19, 2025
帯状疱疹ワクチン定期接種開始!!帯状疱疹と2種類のワクチンについて解説
皆さん、こんにちは!
今回は、最近テレビCMなどでもよく耳にする「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」とその予防に役立つ「帯状疱疹ワクチン」についてお話ししたいと思います。
帯状疱疹ってどんな病気?
帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が原因で起こる病気です。子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが体の中に潜んでいて、過労やストレス、加齢などで免疫力が低下したときに再び活動を始め、神経を伝わって皮膚に到達することで発症します。
初期症状としては、体の片側にピリピリ、チクチクとした痛みが生じ、その後、赤いブツブツや水ぶくれが帯状に現れます。この痛みは非常に強く、夜も眠れないほどになることもあります。また、皮膚の症状が治まった後も、数か月から数年、ときにはそれ以上痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」に移行することもあり、これが非常に厄介な合併症です。
帯状疱疹後神経痛(PHN)とは?
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、水ぼうそうのウイルス(VZV)が再活性化して起こる皮膚と神経の病気です。通常は痛みと発疹が1~2週間で治りますが、発疹が治ったあとも3ヶ月以上神経の痛みが続く場合、それは「帯状疱疹後神経痛(Postherpetic Neuralgia:PHN)」と呼ばれます。
このPHNは、特に高齢の方に多く、痛みが強く生活の質を大きく下げる原因となります。
PHNの原因とメカニズム
帯状疱疹のウイルスは、神経の根元(神経節)に潜んでおり、免疫が弱ったときなどに再活性化します。ウイルスの再活性によって神経が傷つき、炎症が起きると激しい痛みが出現します。
通常は発疹とともに痛みも治まりますが、神経に深刻なダメージが残ると、ウイルスがいなくなった後も痛みが続くのです。
主な要因:
- 神経の変性・脱髄(ワーラー変性)
- 中枢神経への波及(脊髄後角の変化)
- 遺伝子レベルでの痛みの感じやすさの変化
- ごくまれにウイルスの持続的な存在
PHNの症状
PHNの痛みは、帯状疱疹が出た部位(皮膚の神経の流れ:デルマトーム)に沿って続くのが特徴です。
痛みのタイプは大きく3つに分類されます:
- 神経痛タイプ(ニューロパチック・ニューラルジック)
鋭く、電気が走るようなピリッとした痛み(ブラッシングなど軽い刺激でも痛むことも) - 灼熱感タイプ(バーン系)
ジンジン焼けるような持続的な痛み - 混合タイプ
上記の両方の特徴を持つもの
※ 顔(特に三叉神経領域)や胸・背中に出ることが多く、日常生活に大きな影響を与えます。
誰がなりやすい?PHNのリスク
- 高齢者(特に60歳以上)
- 女性(60歳未満では男性よりリスクが高い)
- 免疫が低下している人(ステロイド使用中、がん治療中など)
- 帯状疱疹時の痛みが強かった人
- 糖尿病・喫煙歴がある人
- 顔に帯状疱疹が出た人(特に目の周囲)
診断方法
通常、帯状疱疹の既往があり、3ヶ月以上痛みが続くことで診断されます。追加検査は不要なことが多いですが、以下の場合はMRI検査などが行われます:
- 発疹がなかった(帯状疱疹の皮膚症状を覚えていない)
- 感覚だけでなく筋力にも異常がある
- 痛みが神経の範囲外に広がっている
治療について
治療については、内服薬が基本となりますが、それでもダメな場合は神経ブロックなどが適応となります。簡単にご紹介します。
1. 内服薬による治療(第一選択)
● 灼熱感が主な痛み(神経障害型)に有効:
- 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン、ノルトリプチリン)
- SNRI(デュロキセチン、ベンラファキシン)
- ガバペンチノイド(ガバペンチン、プレガバリン)
● 電気的な痛み(神経痛型)に有効:
- ガバペンチノイド
- カルバマゼピン、オキカルバゼピンなどNaチャネル遮断薬
2. 外用薬(補助的)
- リドカインテープ(一部市販あり)
- カプサイシン外用剤(低濃度:市販、高濃度:医療機関で施行)
3. 非薬物療法
- 認知行動療法(痛みとの付き合い方を学ぶ)
- 鍼治療(研究で一定の効果あり)
4. 難治性の場合(専門医へ紹介)
- 神経ブロック、硬膜外注射
- ボツリヌス注射
- 脊髄刺激装置(SCS)などの神経調節治療
これらの薬剤を使用しても痛みのコントロールができない場合もありますので、ならないようにすることが非常に重要です!!予防をすることは非常に重要です。
予防法
最大の予防は帯状疱疹ワクチンの接種です。
- 50歳以上のすべての方
- 免疫が低下している成人
の方はワクチン接種が推奨されます。
また、帯状疱疹発症時には早期の抗ウイルス薬治療(バルトレックスなど)を行うことで、PHN発症リスクを下げる可能性があります。
帯状疱疹ワクチン、定期接種化のお知らせ
これまで帯状疱疹ワクチンは任意接種でしたが、2024年4月からは、原則65歳以上の方を対象に「定期接種」として公費助成が始まりました。これにより、これまで費用面で接種をためらっていた方も、より気軽にワクチンを受けられるようになりました。
帯状疱疹ワクチンの種類と費用について
現在、帯状疱疹ワクチンには2種類あります。
帯状疱疹ワクチンの種類と費用について
現在、帯状疱疹ワクチンには2種類あります。
- シングリックス(不活化ワクチン)
特徴: 不活化ワクチンであり、2ヶ月以上の間隔を空けて2回の接種が必要です。帯状疱疹の発症を約90%以上抑える高い効果があり、高齢者でも高い効果を維持するとされています。帯状疱疹後神経痛の予防効果は約88%と報告されています。免疫機能が低下している方も接種可能です。9年以上の効果が示唆されています。
主な副反応: 注射部位の痛み、発赤、腫脹がやや多くみられます。全身性の副反応として、筋肉痛、倦怠感、頭痛、発熱がやや多く報告されています。アナフィラキシーなどの重篤な副作用は非常にまれです。
費用:
京都市にお住まいの方: 1回あたり18,000円です。
宇治市・久御山町にお住まいの方: 1回あたり6,500円です。 - 乾燥弱毒生水痘ワクチン(生ワクチン)
特徴: 生ワクチン(弱毒化したウイルス)であり、1回の接種で完了します。帯状疱疹の予防効果は約50~60%で、年齢と共に効果が減弱するとされています。帯状疱疹後神経痛の予防効果は約60%です。免疫低下者への接種は禁忌とされています。約5年で効果が低下すると言われています。
主な副反応: 注射部位の発赤、腫脹がみられます。全身性の副反応として、発熱、発疹、倦怠感が報告されています。アナフィラキシーなどの重篤な副作用は非常にまれです。
費用:
京都市にお住まいの方: 1回あたり4,000円です。
宇治市・久御山町にお住まいの方: 1回あたり2,500円です。
どちらのワクチンも、帯状疱疹の発症リスクを下げ、もし発症しても症状を軽くする効果が期待できます。(助成後の自己負担額は各自治体によって異なりますので、詳しくはお住まいの市町村の窓口にご確認ください。)
自治体による費用格差が大きいですね。財政事情が反映されているのでしょうか。ちょっと気になりますね。
最後に
帯状疱疹は、一度かかると強い痛みに悩まされる可能性のある病気です。ワクチン接種は、そのつらい症状を未然に防ぐための有効な手段となります。50歳を過ぎたら、ぜひワクチン接種をご検討ください。
ご不明な点がありましたら、いつでも当院までお問い合わせください。