• 9月 2, 2026

息を吸うときに「ヒーッ」と音がする原因は?WheezeとStridorの違いを解説

辻医院の副院長の辻です。

「息を吸うときに、喉からヒーッと音がする」「ヒューヒューするので喘息ではないかと心配」——このようなお話を伺うことがよくがあります。

医師は音が「吸うとき」に出るのか、「吐くとき」に出るのかという点を非常に重要と考えています。喘息で聞かれやすいwheeze(ウィーズ)と、喉や上気道から生じるstridor(ストライダー)では、音が出る場所やタイミングに違いがあります。

この記事では、京都市伏見区醍醐の辻医院(内科・呼吸器内科)が、WheezeとStridorの違い、誘発性喉頭閉塞症(ILO)を含む原因、検査、受診の目安をわかりやすく解説します。

まず結論(お急ぎの方へ)

  • 吐くときに胸から「ヒュー」「ゼー」と聞こえる場合は、喘息など肺の中の気管支が狭くなる病気を考える手掛かりになります。
  • 吸うときに喉から「ヒーッ」と聞こえる場合は、喉頭や声帯を含む上気道が狭くなっている可能性を考えます。
  • 吸気性の音を起こす原因の一つに、誘発性喉頭閉塞症(ILO)があります。ただし、音だけでILOや喘息と診断することはできません。
  • 会話ができないほどの息苦しさ、顔や喉の腫れ、唇の色が悪いなどの症状がある場合は、早急な対応が必要です。

Wheeze(ウィーズ)とStridor(ストライダー)の違い

見分けるヒントWheeze(ウィーズ)Stridor(ストライダー)
音が出やすいタイミング主に息を吐くとき(呼気)主に息を吸うとき(吸気)
音を感じやすい場所胸の奥喉・首のあたり
音の表現ヒュー、ゼー、ヒューヒューヒーッ、キューッという高い音
狭くなる場所肺の中の気管支喉頭・声帯付近などの上気道
症状の例吐きにくい、胸が苦しい吸いにくい、喉が締まる
Wheeze(息を吐くときの気管支音)とStridor(息を吸うときの喉の音)の違いを示す比較図

大切な注意点
この表は診断ではなく、受診時に症状を整理するための目安です。喘息とILOが同時にある方もいるため、吸気・呼気の違いだけで病名を決めることはできません。

Wheezeが「吐くとき」に聞こえやすい理由

喘息やCOPDでは、炎症や気管支の収縮によって、肺の中にある気管支が狭くなります。息を吐くときは胸の中の圧が高まり、もともと狭くなっている気管支がさらに狭くなりやすいため、空気が通る際に「ヒュー」「ゼー」という連続した音が聞こえることがあります。肺の中で口笛を吹いている状態ですね。

典型的には、胸の奥から音がする、息を最後まで吐き切りにくい、夜間から明け方に悪化する、といった症状を伴います。ただし、喘息の症状は患者さんによって異なり、発作の程度によっては音が目立たないこともあります。

咳だけが長く続く場合は、「咳喘息は喘息じゃないの?:呼吸器専門医が解説」も参考にしてください。

Stridorが「吸うとき」に聞こえやすい理由

Stridorは、喉頭や気管など上気道が狭くなったときに生じる高い音です。胸の外にある上気道では、息を吸うときに内側へ引き込む力が加わるため、狭窄があると吸気時に音が強くなりやすくなります。

患者さんは「胸より喉が鳴る」「空気を吸い込めない」「首のあたりが締まる」と表現することがあります。狭くなる場所や原因によっては、吸うときと吐くときの両方で音が聞こえることもあります。

息を吸うときの「ヒーッ」で考える誘発性喉頭閉塞症(ILO)

誘発性喉頭閉塞症(Inducible Laryngeal Obstruction:ILO)は、運動、におい、煙、冷たい空気、緊張などをきっかけに、喉頭が一時的に狭くなって呼吸がしにくくなる状態です。以前はVocal Cord Dysfunction(VCD:声帯機能不全)などと呼ばれていた病態も、現在はILOという名称で整理されています。
風邪の時にせき込みすぎて「ヒーッ」っとなるのもILOの可能性があります。

特に運動で誘発されるものはEILO(Exercise-Induced Laryngeal Obstruction)と呼ばれます。

ILOを考える手掛かり

  • 運動中や緊張したときに、急に喉が締まる
  • 「吐けない」よりも「吸えない」と感じる
  • 息を吸う瞬間に、喉から高い音がする
  • 香水、煙、冷気などの刺激で症状が出る
  • 発作が突然始まり、比較的短時間で軽くなることがある
  • 喘息の吸入薬を使っても、その発作には反応しにくい

これらはあくまで手掛かりです。ILOは喘息に似た症状を起こし、両者が併存することもあります。喘息治療を続けても症状の強さと呼吸機能・気道炎症の所見が合わない場合には、喉頭を含む別の原因も検討します。

運動時の咳や息切れについては、「運動すると咳や息切れが出る方へ―運動誘発性気管支収縮(EIB)について」もご覧ください。

ILO以外にも、吸うときの音を起こす病気があります

「息を吸うとヒーッとする=ILO」と決めつけることはできません。声帯麻痺、喉頭の腫れ、気管の狭窄、異物などでも、吸気時の異常音が出ることがあります。

食べ物や薬のあとに顔・唇・喉が腫れた場合は、重いアレルギー反応の可能性があります。また、急に呼吸ができなくなった場合には異物なども考える必要があります。このような急な症状は、自己判断で経過を見ないでください。

呼吸器内科では、どのように原因を調べるの?

診察では、音の呼び方だけではなく、症状が出る状況と時間経過を確認します。

  • 吸うときか、吐くときか
  • 音は胸からか、喉からか
  • 突然始まるか、徐々に悪化するか
  • 運動中か、運動を終えたあとか
  • 何分くらい続くか
  • 夜間・早朝にも症状があるか
  • 吸入薬を使ったときに変化があるか

喘息が疑われる場合

呼吸機能検査(スパイロメトリー)で気流制限を確認し、必要に応じて呼気一酸化窒素(FeNO)で好酸球性の気道炎症を評価します。症状、聴診、検査結果、治療への反応を組み合わせて判断します。

ILOが疑われる場合

ILOの診断では、症状が起きているときの喉頭の動きを確認することが重要です。必要に応じて耳鼻咽喉科などと連携し、症状を誘発した状態での喉頭内視鏡検査を検討します。運動時だけ症状が出るEILOでは、運動中に喉頭を観察する検査が行われることがあります。

症状がないときには喉頭が正常に見えることがあるため、通常時の検査だけで否定できない場合があります。

治療は原因によって異なります

喘息によるWheezeであれば、気道の炎症や狭窄に対する吸入治療などを検討します。一方、ILOでは、発作時に喉頭を閉じにくくする呼吸法の練習や、音声・言語療法(speech therapy)、喉頭・呼吸のリトレーニングなどが治療の中心になることがあります。

また、鼻の病気、胃食道逆流、刺激物への曝露など、症状を誘発する要因があれば、それぞれへの対応を検討します。喘息とILOが併存している場合は、どちらか一方に決めつけず、両方を分けて評価することが大切です。

喘息の治療中に吸気時の症状がある場合も、自己判断で吸入薬を中止せず、処方した医師へご相談ください。

このような症状は早めに受診してください

緊急性が高い症状

  • 会話ができないほど息苦しい
  • 唇や顔色が青白い
  • 顔、唇、舌、喉が急に腫れてきた
  • 食べ物や薬の直後に呼吸が苦しくなった
  • 異物を吸い込んだ可能性がある
  • 安静にしても呼吸困難が改善しない

これらの症状がある場合は、診療時間を待たず救急要請を含めた対応を検討してください。

呼吸器内科への相談を検討する症状

  • 吸うとき・吐くときの異常音を繰り返す
  • 運動中に喉が締まる、吸えない感じがある
  • 喘息治療を続けても息苦しさが残る
  • 夜間や早朝の咳・喘鳴が続く
  • 日常生活や運動に支障が出ている

受診前に確認しておくと役立つこと

  • 音は吸うときか、吐くときか
  • 音は喉からか、胸からか
  • 運動中か、運動後か
  • 突然始まり短時間で治るか、しばらく続くか
  • におい、煙、冷気、緊張などのきっかけがあるか

安全な状況であれば、発作時の呼吸音や首・胸の動きをスマートフォンで録音・撮影しておくと、診察時の参考になる場合があります。無理に症状を再現する必要はありません。

よくある質問(FAQ)

Q. 息を吸うときにヒーッと音がしたら喘息ではないのですか?

喘息では呼気のWheezeが典型的ですが、症状は必ずしも教科書どおりではありません。喘息とILOが併存することもあるため、音のタイミングだけでは判断できません。

Q. 喉から音がするのはILOですか?

ILOは原因の一つですが、声帯麻痺、喉頭の腫れ、気管の狭窄などでも似た音が出ることがあります。繰り返す場合は医療機関でご相談ください。

Q. ILOはどのように診断しますか?

詳しい問診に加え、症状が起きているときの喉頭内視鏡所見が重要です。症状が運動や刺激で誘発される場合は、その状況を再現しながら観察する検査が検討されます。

Q. ILOに治療法はありますか?

原因や病型に応じて、呼吸法の練習、音声・言語療法、誘発要因への対応などが検討されます。喘息が併存する場合は、喘息治療も並行して行います。

Q. 何科を受診すればよいですか?

喘息や気管支の病気が疑われる場合は内科・呼吸器内科、喉の症状が強い場合は耳鼻咽喉科が主な相談先です。症状に応じて診療科が連携して評価します。

まとめ

呼吸の音は、「いつ鳴るか」「どこから聞こえるか」が重要な手掛かりです。吐くときに胸から聞こえるWheezeは肺の中の気管支、吸うときに喉から聞こえるStridorは喉頭や上気道の狭窄を考えるきっかけになります。

ただし、音だけで病名を決めることはできません。喘息とILOが併存する場合や、別の上気道疾患が隠れている場合もあります。繰り返す呼吸音、息苦しさ、喘息治療と合わない症状がある方は、一度ご相談ください。

京都市伏見区醍醐で呼吸器症状にお困りの方へ

辻医院では、内科・呼吸器内科の診療を行っています。症状に応じて、呼吸機能検査、呼気一酸化窒素(FeNO)検査、胸部X線検査などを検討し、喉頭の詳しい評価が必要な場合は耳鼻咽喉科などとの連携を検討します。

息を吸うときの「ヒーッ」という音、繰り返す喘鳴・息苦しさのご相談・ご予約は、Web予約より承っています。

診療時間
午前 9:00〜12:30(受付 8:45〜12:15)
午後 17:00〜19:30(受付 16:50〜19:15)
休診:日曜・祝日、水曜・土曜の午後
アクセス:京都市伏見区醍醐合場町18-11(石田駅から徒歩10分/京阪バス「合場川」停留所から徒歩1分)

参考資料

医療法人緑萌会 辻医院 075-571-0951 ホームページ